来たる、FIRE達成日に向けて、FIRE後の社会保険手続き、社会保険料負担、住民税の観点について確認をしておきたいと思います。
これについては避けては通れませんので事前確認の上、しっかりと対応したいと思います。
【今回の前提として】
FIRE後は会社に属さず、個人(フリー)で事業を行うこととします。

確認項目は次の4つです。
1.健康保険 2.国民年金 3.雇用保険 4.住民税
それぞれ確認していきます。
1.健康保険
選択肢としては、
①在職時に加入していた健康保健(協会健保・健康保険組合)で引き続き任意継続被保険者になる。
②国民健康保険に加入する。
③配偶者等が加入している健康保険(協会健保・健康保険組合)の被扶養者として保険に加入する。
① 任意継続被保険者の場合
・任意継続被保険者は、「会社を退職や労働時間の短縮等によって健康保険の被保険者の資格を喪失したときに、一定条件のもと個人の希望により、個人で継続して加入できる制度を言います。
● 資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があり、資格喪失日から「20日以内」に申請すること(20日目が営業日でない場合は翌営業日まで)が要件となっています。
● 加入できる期間は「退職日の翌日から2年間」となっています。
・保険料については、「退職時の標準報酬月額にお住まいの都道府県の保険料率(40歳以上65歳未満の方は、介護保険料率が含まれます。)を乗じた額が保険料となります。ただし、保険料には上限があり、退職時の標準報酬月額が30万円を超えていた場合は、30万円の標準報酬月額により算出した保険料となります。(※2022年12月時点協会けんぽの場合・健康保険組合は各自組合へ確認ください。)
・在職中は会社とご本人で保険料を半分ずつ負担することとなっていましたが、退職後(資格喪失後)はご本人が全額負担することとなります。
・保険料は、原則2年間変わりません。
・扶養家族の方の保険料はかかりません。
(参考:健康保険協会)
② 国民健康保険の場合
・任意継続被保険者にならない場合は、お住まいの市区町村での国民健康保険に加入します。その場合、退職日翌日から14日以内に市区町村にて保険の加入手続きが必要となります。
・保険の手続きや保険料額は、お住いの市区町村によって若干の違いがあります。詳細につきましては、お住まいの市区町村にてご確認いただければと思います。
・国民健康保険料は、前年1〜12月の所得金額に基づいて、4月〜翌年3月分が算出されるので、前もって源泉徴収票を用意されておくとよろしいかと思います。紛失している場合、会社の人事・総務へ依頼して取り寄せておくとスムーズです。
(参考:東京都港区)

▶︎ 国民健康保険の場合、前年1〜12月の所得金額に基づいて、4月〜翌年3月分の保険料が算出されます。FIRE直後で一時的に無職、無収入状態であっても、前年の所得に対して保険料が算出される為、保険料が高額になることがあるので心得ておきましょう!!
▶︎ 国民健康保険の場合、世帯主、扶養者の区別無く、世帯人員数に応じて保険料が決定されます。
▶︎ 市区町村によって保険料の算定方法が異なるので、住所地の市区町村の国民健康保険担当窓口で確認することをおすすめします!
③配偶者等が加入している健康保健(協会健保・健康保険組合)の被扶養者として保険に加入する場合
【被扶養者の範囲】
- 被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。 - 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。

【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
・認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
・認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。
※自営業を営んでいる認定対象者の年間収入の算定にあたっては、収入から控除できる経費は事業所得の金額を計算する場合の必要経費とは異なりますので留意ください。
控除できる経費の例売上原価(一般所得)、種苗費、肥料費(農業所得)等
控除できない経費の例 減価償却費(一般所得、農業所得、不動産所得)等
▶︎ 健康保健(協会健保・健康保険組合)の被扶養者の場合は、前年所得ではなく、現在の状況によります。従って、FIRE退職(無職)で、加入要件を満たす場合、保険料がかからず、配偶者等の被扶養者になることができます。ここが、国民健康保険との明確な違いです!!
2.国民年金
【年金制度の概要図】
FIRE後は、中央(厚生年金第2号被保険者)から左側(国民年金第1号被保険者)に移行します。

・日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、厚生年金保険に加入していない方は、すべて国民年金の被保険者となります。また、毎月ご自身で保険料を納める必要があります。
・1カ月当たりの保険料は16,590円です(2022年度)※保険料は毎年変更されます。なお、まとめて前払い(前納)すると、割引が適用されるのでおトクです。
(参考:日本年金機構)
【付加保険料について】
国民年金第1号被保険者ならびに任意加入被保険者は、定額保険料に付加保険料を上乗せして納めることで、受給する年金額を増やせます。
【定額保険料】 2022年度:月額16,590円
【付加保険料月額】 400円
【付加年金額】 付加年金額(年額)は「200円×付加保険料納付月数」で計算し、2年以上受け取ると支払った付加保険料以上の年金が受け取れます。例えば、20歳から60歳までの40年間付加保険料を納めていた場合の年金額は次のとおりとなります。
200円×480月(40年)=96,000円(年額)が付加年金額として老齢基礎年金に上乗せ
777,800+96,000=873,800円(年額)
(毎月の定額保険料(令和4年度:16,590円)を40年間納めた場合の老齢基礎年金額⇒777,800円※2022年時点の金額)
3.雇用保険(失業手当)
・失業手当は、雇用保険の被保険者の方が離職し、失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探し1日も早く再就職していただくために支給されるものです。
・雇用保険の被保険者に対する求職者給付の基本手当の所定給付日数(基本手当の支給を受けることができる日数)は、受給資格に係る離職の日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間及び離職の理由などによって決定され、90日~360日の間で決定されます。
・手続きにあたり、会社から発行される「離職票」が必要になるので、退職時に請求してもらうようにしましょう。
・失業手当受給までの基本的な流れは以下のとおりです。
- 住所地管轄のハローワークで求職の申し込み(離職票と求職票の提出)を行う
- 7日間の待期期間 + 給付制限期間
- 雇用保険受給説明会と失業認定日に出席
- その後1週間程度で初給付
- 以降は毎月(4週間に一度)の失業認定日に出席、その後約1週間程度で給付
(参考:ハローワークインターネットサービス)
過去記事、ハローワークで実施しているスキル向上支援制度についても併せてご参照ください。
4.住民税
・住民税はお住まいの都道府県や市区町村に対して納付する税です。
・住民税の額は、1月1日から12月31日までの1年間の収入を元に算出され、翌年の6月からの期間に納付します。納付の方法には、主に個人事業主を対象とした「普通徴収」と、主に会社員や年金受給者を対象とした「特別徴収」があります。

普通徴収(主に個人事業主)
税額は、確定申告の際に申告した所得を元に計算され、自治体から通知されます。納付の際は、通知時に送付される納付書を用いて、一般的には年4回に分けて納付します。
特別徴収(主に会社員や年金受給者)
税額は、会社などを通じて申告された所得を元に計算されます。納付は、給与や年金の支払い時にあらかじめ差し引かれます(源泉徴収)
・退職時は、通常、退職時点の残額を一括して特別徴収にて納めます。(申出により、普通徴収への切り替えも可能です。)
【要注意】
・厄介なのが、FIRE後に通知される、新年度分の住民税です。退職をしていて、かつ、定期的な安定収入がない場合、負担が重くのしかかります。見落とさないよう、注意しましょう!!

まとめ
以上、今回は、健康保険、国民年金、雇用保険、住民税について、主な手続きの内容をご紹介しました。まずは、「どういった内容で」「何をすべきか」ということを抑えていただければと思います。いずれも、制度の内容が複雑なので、それぞれの内容をしっかりと理解した上でご対応いただく必要があります。
特に、健康保険は任意継続、国民健康保険、配偶者等の扶養家族になる、の選択をする必要があります。保険料の確認にあたり、予め昨年度と今年度の源泉徴収票を会社(人事・総務)から入手の上、役所で国民健康保険料を確認の上、任意継続被保険者の保険料と比較するとスムーズです。なお、配偶者等が加入している健康保健の扶養家族に入れる場合は保険料は無料なので、配偶者等がいらっしゃる方の場合、扶養に入れるか否かについて、予め確認しておいた方が良いです。扶養認定の可否によって、社会保険料額が世帯全体で見た場合に大きく変わる可能性があります。
住民税の通知は毎年6月に届きます。予め準備しておきましょう。
その他、わからない場合は、それぞれを管轄する役所に問い合わせて確認するとスムーズです。悩まずに随時確認して進めていきましょう!
以上、ご参考になりましたら幸いです。